予防について
大切なワンちゃん猫ちゃんを病気のリスクから守るためには、元気なうちから健康管理や予防を習慣化しておくことが大切です。
犬のワクチン
犬のワクチンには「混合ワクチン」と呼ばれているものと「狂犬病ワクチン」とがあり、別々に接種する必要があります。
国内でワクチンが使用されている病原体は、以下の通りです。
狂犬病ウイルス
ジステンパーウイルス
アデノウイルス
パルボウイルス
パラインフルエンザウイルス
レプトスピラ
ボルデテラ
世界小動物獣医師会(WASAVA)ワクチネーションプログラムではこれらのワクチンを「コアワクチン」「ノンコアワクチン」「非推奨ワクチン」に分類しています。
コアワクチンとは致死率が高く、世界的に重要な感染症に対するもので、地域や生活様式に関わらず全ての犬が接種すべきワクチンのことです。
これに対し、ノンコアワクチンとはその疾患がその地域に全く分布していない場合や曝露のリスクが低い場合には接種しなくてもよく、ライフスタイルに合わせて必要になるワクチンのことです。
コアワクチンは3年に1度、ノンコアワクチンは毎年接種が推奨されていますが、現在、日本ではノンコアワクチンのみの製剤は存在しないことから、現実的にはコアワクチンも毎年接種することになります。
混合ワクチン
フェリーチェペットクリニックで接種している混合ワクチンは下記の3種類です。
ライフスタイルに合わせてご家族と相談、選択していただいています。
1年に1回の接種が推奨されています。
- 6種混合ワクチン
犬ジステンパー・犬伝染性肝炎・犬伝染性喉頭気管炎・犬パラインフルエンザ・パルボウイルス感染症・犬コロナウイルス感染症
※レプトスピラは含まれず - 8種混合ワクチン
6種にレプトスピラを2種(血清型Canicola、Icterohaemorrhagiae)を加えたもの - 10種混合ワクチン
6種にレプトスピラを4種(血清型Canicola、Icterohaemorrhagiae、Pomona、Grippotyphosa)を加えたもの
推奨ワクチンについて
フェリーチェペットクリニックでは、レプトスピラを含む8種混合または10種混合ワクチンを積極的に推奨しています。
レプトスピラ症はノンコアワクチンに分類されていますが、子犬に限らず、成犬でも重篤化する可能性のある疾患で、人も感染する人獣共通感染症(家畜伝染病予防法の届出伝染病;7血清型)です。
ネズミなどのげっ歯類を中心とした多くの哺乳動物の尿細管に定着、尿中に排泄され、この尿または尿に汚染された水や土壌との接触により感染します。
250種類以上の血清型があり、軽症型もありますが重症型は死亡率の高い疾患です。
犬の感染初期症状としては、発熱・倦怠感・食欲不振・嘔吐・脱水・出血がみられ、その後、 腎不全・肝不全に発展し、治療が遅れれば死に至る疾患です。
福岡県では、2022年8月に河川での入水による人の集団感染が報告されており、犬でも自験例も含め時折発生報告があります。
存在する250種類以上の血清型に対し、ワクチンで予防できるのは4血清型ですが、死亡率の高い血清型Canicola、Icterohaemorrhagiaeは8種混合ワクチンに含まれています。
犬のワクチンについては、以下のページもご参照ください。
狂犬病予防接種
狂犬病予防注射は、毎年1回接種することが義務付けられており、接種した証明として「狂犬病予防注射済票」の交付を受けなければなりません。
狂犬病予防注射は、春に自治体が公民館などで行う集団注射会場、または動物病院で受けることができます。
フェリーチェペットクリニックは糟屋獣医師会に加入していますので、集団注射と同料金で接種でき、注射後その場で「狂犬病予防注射済票」の交付が受けられます。
- 狂犬病予防注射料金(1匹)
2,600円 - 狂犬病予防注射済票交付手数料(1匹)
550円
義務化されている理由
狂犬病ウイルスはすべての哺乳類に感染するウイルスで、発症すればほぼ100%死に至る恐ろしい疾患です。
狂犬病は日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国々を除いて、全世界に分布します。
日本国内では、人は1956年を最後に、また、動物では1957年の猫での発生を最後に発生がなく、現在、日本は狂犬病清浄国です。
しかし、輸入感染事例(人)としては、狂犬病流行国で犬に咬まれ帰国後に発症した事例が1970年にネパールからの帰国者で1例、2006年にフィリピンからの帰国者で2例、2020年にフィリピンからの入国者で1例あります。
海外ではコンテナ船内に狂犬病ウイルス感染コウモリが見つかったことがあり、日本でも外国船からの動物の不法持ち込みにより感染が発生する可能性があります。
狂犬病は全ての哺乳類に感染しますが、まん延の原因となる動物は限られており、アジア地域等、狂犬病の流行国では、犬が主なまん延源となっています。
従って、狂犬病予防注射を接種することで犬でのまん延が予防され、人への被害を防ぐことができ、日本でも万が一狂犬病が侵入した場合に備えて、飼い犬への狂犬病予防注射が義務づけられています。
予期せぬ反応
ワクチンは病気を予防することを目的とする製剤であり、安全性、有効性、効力などの基準を満たさなければ販売できないものですが、予期せぬ反応を伴う可能性があります。
よく認められる副反応は、ワクチン接種部位の腫れ・疼痛、全身の倦怠感、食欲不振などがありますが、アレルギー反応として、顔面腫脹、掻痒、蕁麻疹またはアナフィラキシーショック(虚脱、貧血、血圧低下、呼吸促迫、体温低下、流涎、ふるえ、けいれん等)が起こることがあります。
そのため、接種後しばらくは安静にし、注意深く観察する必要があります。
これらの反応はワクチンを生成する際に用いられる牛血清、ワクチンの効果を高めるために用いられるアジュバント(水酸化アルミニウムゲル)、ワクチンを安定化させるためのゼラチンが原因と考えられています。
猫のワクチン
猫のワクチンには「弱毒生ワクチン」と「不活化ワクチン」とがあり、別々に接種する必要があります。
国内でワクチンが使用されている病原体は、以下の通りです。
猫ヘルペスウイルス(FHV-1)
猫カリシウイルス(FCV)
猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)
猫白血病ウイルス(FeLV)
コアワクチンは、致死率が高く、世界的に重要な感染症に対するもので、地域や生活様式に関わらず全ての猫が接種すべきワクチンです。
これに対しノンコアワクチンは、曝露のリスクが低い場合には接種しなくてもよく、ライフスタイルに合わせて必要になるワクチンです。
かつて製造されていた猫免疫不全ウイルス(FIV)ワクチンは販売が終了し、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)に対するワクチンはありません。
混合ワクチン
フェリーチェペットクリニックで接種している混合ワクチンは下記の2種類です。
ライフスタイルに合わせてご家族と相談、選択していただいています。
- 3種混合ワクチン
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)を引き起こす猫ヘルペスウイルス(FHV-1)・猫カリシウイルス(FCV)・猫汎白血球減少症ウイルス(FPV) - 5種混合ワクチン
3種に加え猫白血病ウイルス(FeLV)・猫クラミジア感染症
低リスク(室内1頭飼いで、ペットホテルを利用しない)の猫は、3年ごとの接種が推奨されています。(毎年接種しても良い)
高リスク(外に出たり、脱走することがある子、網戸越しで外猫と接触する可能性がある)の猫は、毎年の接種が推奨されています。
猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチンは持続期間が1年未満と短いため、毎年接種が推奨されます。
事前にご理解いただきたいこと
猫汎白血球減少症ウイルスワクチンは、ほぼ全てで完全な感染防御と発症防御ができる一方で、猫ヘルペスウイルスおよび猫カリシウイルスワクチンがもたらす防御効果は完全防御ではなく相対的防御であり、発症が完全にみられないというものではありません。疾患の程度を減少させるものです。
猫カリシウイルスワクチンは、複数の株に対して交差防御免疫を誘導するようにデザインされていますが、それでもワクチン接種を受けた成猫に感染や発症がみられる可能性があります。
猫ヘルペスウイルスワクチンに関しても、強毒ウイルスの感染を防御できるワクチンはなく、また感染した強毒ウイルスは潜伏し、強いストレスがかかった期間に再び活性化する可能性があること、再活性化したウイルスはワクチン接種済みの猫に臨床徴候を発現させ、あるいはウイルスが感受性の猫に伝播し、感染症を引き起こす可能性があるということをご理解いただく必要があります。
そのことを踏まえた上で、コアワクチンの接種は全ての猫において強く推奨されています。
ノンコアワクチンに分類されている猫白血病ウイルスワクチンは、完全な防御および感染予防効果を示すものではなく、また免疫が1年以上持続するものでもありません。
個々の猫のライフスタイルや曝露リスク、また地域における感染率によって検討すべきとされています。
すなわち、猫白血病ウイルス感染症が流行している地域で、外に出る習慣がある(例えば屋外に出る猫とともに生活していることも含む)猫は、猫白血病ウイルスワクチンの接種を積極的に検討すべきと考えています。
すでに抗原血症を呈している猫にワクチン接種を行うと猫白血病ウイルス関連の臨床症状を呈する可能性があるため、初回接種前の血液検査により陰性を確認することは必須です。
「弱毒生ワクチン」とはウイルスや細菌などの病原体を別の宿主や組織培養にて繰り返し継代し、本来の宿主に対する病原性を健弱させた弱毒株を生きたまま使用するワクチンで、接種された弱毒株は細胞に感染、増殖し、CD8陽性T細胞という免疫細胞に対し抗原提示する為、細胞性免疫が活性化します。
一方、「不活化ワクチン」とは宿主や組織培養にて増殖した病原体を精製した後に増殖性を失活させたものです。抗原だけでは免疫原性が十分でないため免疫活性化を目的にアルミニウムなどのアジュバントを添加することが多いとされていますが、アルミニウムは猫の注射部位肉腫(注射を接種した部位に発生する非上皮性悪性腫瘍。局所浸潤性が極めて高く、局所再発率も高く、そして遠隔転移も起こります)との関連が示唆されているため、アジュバント非添加ワクチンの使用が推奨されています。
注射部位肉腫は当初ワクチンに関連して発生すると考えられていたためワクチン関連肉腫と呼ばれていましたが、現在ではワクチン以外の製剤でも発生するとされています。
以前はワクチンは肩甲骨間に接種されていましたが、近年では万が一注射部位関連肉腫が発生してしまった後の対応を考え臀部皮下に接種するようにしています。
フィラリア予防
フィラリア症(犬糸状虫症)は蚊が媒介する犬糸状虫(Dirofilaria immitis)が肺動脈に寄生する疾患で、肺動脈の血管内皮損傷により血流障害、肺の肉芽腫性炎症、肺動脈血栓塞栓症、うっ血性心不全が引き起こされ、腎不全や肝不全にも発展し、死に至る恐ろしい病気ですが、予防薬で防ぐことができます。
予防の時期と回数
フェリーチェペットクリニックでは、蚊が見られ始めて1ヶ月後から、蚊が見られなくなって1ヶ月後までの月1回、投薬による予防をご提案しています。
福岡県では4月末~5月に開始し、11月末~12月までの合計8回が適当であると考えられます。
予防薬の種類
フィラリア予防薬には、以下の種類があります。
フィラリア予防薬(+消化管内寄生虫駆除)と、フィラリア・ノミ・マダニ予防が一つの薬でできるオールインワンタイプとがあります。
ワンちゃんの個性や目的、価格に応じてお選びいただけます。
詳しくは、フェリーチェペットクリニックのスタッフまでご相談ください。
血液検査の必要性
もし、フィラリア成虫が寄生していたり、ミクロフィラリアが大量に寄生している状態でフィラリア予防薬を投与してしまうと、ミクロフィラリアの急激な死滅によりアナフィラキシーショック症状が起こることがあり、死亡することもあります。
そのため、American Heartworm Society(米国犬糸状虫学会)では、7ヶ月齢以上の全ての犬において、予防薬の投与を行う前に血液検査をすべきとしています。
フィラリア陽性になったら
血液検査でフィラリアに感染していることがわかった場合は、イベルメクチンという予防薬をドキシサイクリンという抗生剤とともに投与します。
フィラリアのメス成虫からのミクロフィラリア(幼虫)の産出を抑え、成虫を虚弱化、成虫が寿命を迎えるのを待つ治療を行います。
成虫の95%が殺滅されるまで、2年以上の継続投与が必要であるとされています。
検査と同時に健康診断
フェリーチェペットクリニックでは、フィラリア検査と同時に受けることができる健康診断をご用意しています。
採血が1回で済むので、ワンちゃんへの負担が少なくオススメです。
フィラリア検査+血球検査+生化学11項目
7,850円相当→6,300円(税込6,930円)
フィラリア検査+血球検査+生化学19項目
6,000円(税込6,600円)
フィラリア検査+血球検査+生化学11項目+T4+SDMA
12,300円(税込13,530円)
投薬を忘れてしまったら
1ヶ月でも投薬を忘れてしまうと、約60日空いてしまいます。
そうなると100%の予防効果が得られない可能性があるため、毎月忘れずに投薬することがとても大切です。
もし、投薬を忘れたことに気づいたら、どの程度投与間隔が空いてしまっているかにより対応が異なりますので、必ず動物病院にご相談ください。
猫のフィラリア
犬糸状虫症(フィラリア症)は、本来イヌ科動物によく起こる疾患であり、猫では感染に対して抵抗力があります。
しかし、猫での有病率は、犬における寄生率の5〜20%であると書物などに記載がありますが、これは成虫の寄生率であり、実際には61〜90%の猫が暴露されているということがわかっています。
決して少ないわけではありません。
ノミ・マダニ予防
ノミ・マダニは様々な病気を犬や猫だけでなく、人にももたらします。越冬する生物ですので、年間を通しての予防が強く推奨されます。
犬の予防薬
おいしくおやつ感覚で投与できる経口薬があります。
経口薬は「効果発現が早い」「シャンプー等の時期に関係なく投与できる」などの利点がありますが、好みではないと食べない子もいます。
一方、スポット製剤は「滴下する前後1日はシャンプーや水浴を控えること」「滴下部に皮膚炎を起こす可能性」があり、経口薬と比較し効果発現にはやや時間が必要などのデメリットもありますが、経口剤の投与が困難な子には便利です。
詳しくはスタッフまでご相談ください。
犬のノミ・ダニ予防については、以下のページもご参照ください。
猫の予防薬
猫には経口薬はなく、全てスポット製剤です。
効果が1ヶ月間のもの、消化管寄生虫にも効果があるもの、効果が3ヶ月間持続するものもあります。
詳しくはスタッフまでご相談ください。
猫の感染症やノミ・ダニ予防については、以下のページもご参照ください。
健康診断
ワンちゃん・ネコちゃんともに7歳以上で病気になる確率が2倍、12歳以上でさらに倍になると言われています。
病気だと思っていなくても、健康診断で異常が見つかることも多々あります。
早期発見・早期治療のために健康診断をご検討ください。
人間に換算した年齢
ワンちゃん・ネコちゃんの1年は、人間の4年に匹敵します。
実年齢 | 小〜中型犬・猫 | 大型犬 |
---|---|---|
2歳 | 24歳 | 19歳 |
6歳 | 40歳 | 47歳 |
8歳 | 48歳 | 61歳 |
10歳 | 56歳 | 75歳 |
12歳 | 64歳 | 89歳 |
14歳 | 72歳 | 103歳 |
0〜6歳まではシルバーコース、6歳〜はゴールドコースをオススメしています。
既往歴や今の体調面などをお伺いしてコースを選んでいきます。
午前中にご来院いただき、午後の診察時間にお迎えをお願いします。
シルバーコース
身体検査、血液検査、尿検査、便検査
11,500円相当→9,500円(税込10,450円)
ゴールドコース
身体検査、血液検査、尿検査、便検査、レントゲン
18,500円相当→13,500円(税込14,850円)
プラチナコース
身体検査、血液検査、尿検査、便検査、レントゲン、エコー検査、心電図
24,500円相当→18,500円(税込20,350円)
オプション検査
T4(甲状腺ホルモン)
高齢期に入ると、
犬は甲状腺機能低下症
猫は甲状腺機能亢進症が多くみられます。
4,000円(税込4,400円)
SDMA(腎不全早期発見マーカー)
従来の検査では腎機能の約75%が失われてから数値が高くなるとされていましたが、SDMA検査では腎機能の約40%が失われた段階で数値が高くなるとされています。
3,000円(税込3,300円)
フィラリア検査と同時の健康診断もあります。詳しくはこちらをご覧ください。
歯石除去
進行した歯周炎は、口鼻瘻管(こうびろうかん:上あごの歯周病が進行し、歯の根元と鼻の間の骨が溶けてできたトンネル状の穴)、根尖膿瘍(こんせんしゅういのうよう:歯根に膿がたまる病気)、眼窩下膿瘍(がんかかのうよう:歯根に膿がたまって目の下が腫れる病気)や下顎瘻(かがくろ:下あごにできるこぶ)、疼痛によるよだれ・食欲減退/廃絶の原因となるばかりでなく、下あごの病的骨折や敗血症、骨髄炎の原因にもなり得る可能性があります。
歯石除去は全身麻酔下で行います。愛犬・愛猫の口臭が気になったり、食べ方や表情が変わったな?と思ったら、積極的に検討しましょう!
気になる方はお気軽にフェリーチェペットクリニックスタッフまでご相談ください。