子猫について
フェリーチェペットクリニックがある福岡県篠栗町では、猫からの『4つのお願い』を掲げています。ルールを守って、猫を飼っている人もいない人も気持ちよく過ごせるまちづくりに協力しましょう。
子猫を迎えたら
野外で子猫を保護したり、里親として子猫を引き取られた場合、以下を参考に週齢をご確認ください。体力が十分でない子猫は急変しやすいので、細やかな観察とケアが必要です。
眼瞼(まぶた)が閉じている
へその緒が5日齢までに脱落
自力での歩行/排便排尿はできない
眼瞼(まぶた)は7〜10日齢であくが視覚/聴覚は未発達
前肢による遊泳運動
自力排便排尿はできない
視覚は未発達だがミルクを飲ませてくれる人を識別
肘と膝を屈曲した姿勢で歩行可能
自力排便排尿できない
15日:乳前歯、20日:乳犬歯 早期離乳開始
視覚が発達、ボール遊びできるようになる
歩行はしっかりとして、一瞬、走ったりする
自力排便尿が可能でトイレを使えるようになる
乳犬歯が前歯より長く(牙)
離乳開始
虹彩の色が青色から成猫の色に変化。視覚発達
歩行はしっかりとして、高いところに登ったりできる
トイレの場所を覚える
乳臼歯の萌出
ドライフードが食べられる
子猫の健康チェック
ペットショップでご縁があった場合も、保護猫をお迎えした場合も、以下の健康チェックを行ってください。まだ体力が十分でないので、細やかな観察とケアが必要です。
- ごはんを食べない(ミルクを飲まない)、または元気がない
- 皮膚/被毛に褐色または黒色の付着物がある
- 下痢をしている
- 脱毛やかゆみがある
- くしゃみ、鼻水、目やに、よだれが出ている
当てはまる場合は、以下をご確認ください。
①食欲・元気がない
体力がない子猫は、低体温・脱水・低血糖に陥りやすいです。
また、飢餓状態であった子猫にブドウ糖や大量の食事を与えると、インスリンが急に分泌され、リフィーディング症候群(①低血糖:脱力/痙攣、②低カリウム血症:筋力低下/不整脈、③低リン血症:筋力低下/痙攣/溶血)といわれる症状を呈することがあります。
様子がおかしいなと思ったら動物病院に行きましょう。
②褐色または黒色の付着物がある
ノミ・マダニ、またはシラミである可能性があります。駆除が必要です。
③下痢をしている
子猫が下痢をしている場合、消化管内寄生虫が見つかるケースが多くあります。
乳汁感染や経口感染(回虫やジアルジア、コクシジウムなど)、ノミやハジラミの経口摂取による感染(瓜実条虫)、爬虫類の捕食による感染(マンソン裂頭条虫や壺型吸虫)などがあります。
虫の卵などが皮膚や被毛、環境中に付着して再感染するケースや、トリコモナスのように慢性感染してしまう場合もあります。
また、人獣共通感染症も多いため、寄生虫が疑われる場合や治療中は過剰なふれあいを避け、環境を整備し、手指の洗浄・消毒をしっかり行いましょう。
④脱毛やかゆみがある
脱毛やかゆみの原因は、皮膚病が考えられます。特に保護猫には「皮膚糸状菌症」「ノミの寄生」「疥癬(かいせん)」が多くみられます。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症は人獣共通感染症であり伝染力が強い感染性疾患で、人の皮膚糸状菌症の10%は保護猫からの感染であるとの報告もあります。
感染した動物に触ることで人にも感染しますので、治療中は過剰なふれあいを避け、手指の洗浄・消毒をしっかり行いましょう。
感染した被毛は弱くなって抜け落ちます。
角層が剥がれ落ちた脱毛斑ができたり、裂毛(切れたり、折れたり、裂けたりした毛)が見られます。
皮膚は厚くなってシワができ、赤くなることもあります。自傷で新たな病変をつくりつつ、飛地のように拡大します。
初期病変は鼻周りに多い印象ですが、目の周りや耳介、そして足先やしっぽの先など、全身に拡大します。
かゆみは初期ではあまりないようですが、病変を掻くことがあり、その結果、自傷による皮膚炎の炎症のためかゆくなるようです。
治療は抗真菌剤の全身投与を行います。完治まで1〜2ヶ月かかります。
ノミの寄生
詳しくは「予防について」をご覧ください。
疥癬(かいせん)
疥癬とは、ネコショウセンコウヒゼンダニ(Notoedres cati)の寄生による皮膚疾患で、肉眼では見えない虫体が表皮の角質層に寄生し、虫道(疥癬トンネル)を作り、その中で排泄、産卵します。
ヒゼンダニの角皮(クチクラ)および糞便などの代謝物に対するアレルギー反応により強烈なかゆみが引き起こされます。
分厚い角質層が目に見えるように剥がれ落ちます。
耳介、頭部、頚部に病変が拡大します。
重症例では、体幹から四肢にかけて症状が見られることがあります。
ヒゼンダニは宿主特異性が強く、ネコショウセンコウヒゼンダニは猫科動物でのみ繁殖し、猫同士の接触により感染します。治療は滴下製剤を用いることが多いですが、状況により注射製剤の皮下投与、または経口投与を行うこともあります。
⑤くしゃみ、鼻水、目やに、よだれが出ている
野外から保護された子猫は、「目やに、涙、鼻水、くしゃみがひどくてお顔がぐしゃぐしゃ」という症状が見られることが多くあります。
これは上部気道感染症という多因性の疾患で、猫ヘルペスウイルス(Feline Herpesvirus:FHV-1)による猫ウイルス性鼻気管炎(Feline Viral Rhinotracheitis:FVR)、猫カリシウイルス(Feline Calicivirus:FCV)による猫カリシウイルス感染症(Feline Calicivirus Infection)、各種細菌、クラミジアなどが原因です。
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)は感染猫の涙、唾液、鼻汁などに含まれた猫ヘルペスウイルス(FHV-1)が経口、経鼻、経結膜感染することにより引き起こされ、鼻腔・扁桃などで増殖し、結膜・気管・気管支に広がり、粘膜表面にただれや潰瘍が起こり、結膜炎や鼻炎を発症します。
潜伏期間は3〜4日で、発症から3〜4日後(感染後6〜8日)で症状が最もひどくなります。ウイルスは環境中では長く生存できないとされています。
初期症状は、気分の沈み、くしゃみ、食欲不振、発熱、眼および鼻からの透明でサラサラした分泌物、結膜炎、よだれが見られます。
時間の経過とともに二次性の細菌感染を伴った膿性(黄色や緑色でネバネバした分泌物)へと移行します。
重度の場合は、潰瘍性角膜炎やぶどう膜炎に、さらに進むと慢性鼻炎や結膜癒着へと移行します。
鼻腔が細く狭くなったり、異常な呼吸音がみられるようになったりと慢性化してしまうと、完治はあまり望めません。
したがって、可能な限り徹底的、かつ早期にコントロールすることが望ましいようです。
発症して回復した猫の場合、神経細胞にウイルスが潜伏していると考えられています。
ストレスなどにより免疫が弱まると再活性し、約1週間後から約1〜2週間に渡りウイルスを排泄します。発症はしないものの、感染源になってしまうのです。
治療は抗ウイルス薬の全身投与、二次性細菌感染を伴う場合(膿性眼脂/膿性鼻汁)は抗菌薬も併用します。また、抗ウイルス薬の点眼も行います。
猫カリシウイルス感染症(FCV)
猫カリシウイルス感染症(FCV)は猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)と同じように、経口、経鼻、経結膜感染し、鼻腔、口腔、呼吸器官で増殖、肺や関節の滑膜での増殖も認められることもあります。
猫カリシウイルス感染症には、多数の抗原性や病原性の異なるウイルス株が存在し、⑴上部気道型(くしゃみ、鼻汁、流涙など)、⑵潰瘍形成型(流涎を伴う口腔内潰瘍形成)、⑶肺炎型、⑷腸管感染型、⑸子猫破行症候群、⑹流産が引き起こされます。
通常の猫カリシウイルス感染症は急性経過をたどり、10〜14日の経過で治癒しますが、終結後口峡部持続感染が起こることがあります。
発症している猫だけでなく、感染から回復した猫や不顕性感染の猫も長期間ウイルスを排出し、回復した猫のほとんどが30日間以上ウイルスを排泄し続けます。
さらに、排出されたウイルスは常温で環境中に1ヶ月以上、低温であればさらに長く感染性を維持します。
猫カリシウイルス感染症に対しては抗ウイルス薬の全身投与は行われていないのが実情で、ウイルス増殖抑制効果を狙いインターフェロン-ωを用い、二次感染の予防治療として抗菌薬の全身投与を行うことがあります。
また、鼻腔閉塞や口腔内潰瘍による痛みのため食事を摂取できない猫に対しては、積極的な支持治療(輸液、強制給餌、消炎鎮痛剤投与)を行います。
猫汎白血球減少症(Feline parvovirus infection)
猫パルボウイルスの感染により引き起こされる猫汎白血球減少症(Feline parvovirus infection)と呼ばれる感染症があります。
感染猫の症状はほとんど無症状の不顕性から急性死まで様々で、多くは軽度または無症状ですが、一般に若齢猫では重症度が高いとされています。
猫パルボウイルスは細胞分裂の活発な部位で増殖し、骨髄で特に白血球系細胞が抑制され、二次感染を引き起こして40℃以上の発熱が見られたり、小腸粘膜での増殖により嘔吐・下痢といった激しい消化器症状が出ることや、心筋で増殖し急性死を起こすこと、胎児期の小脳などで増殖し、小脳の形成不全に起因する運動失調が見られる場合があります。
感染猫の便が感染源となり感染力が極めて強く、接触・経鼻・経結膜・経口で感染します。
治療は猫カリシウイルス感染症(FCV)と同様、インターフェロン-ωを用いたり、積極的支持治療、二次感染予防として抗菌薬投与が行われます。
この他、猫で問題となるとても重要なウイルスとして、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス (FIV) 、猫伝性腹膜炎ウイルス(FIP)があります。
子猫のスケジュール
動物愛護管理法により生後56日齢以下では販売、引渡、展示が禁止されています。
したがって、保護やご自宅または知人宅などで生まれた場合を除き、子猫とのペットショップでのご縁は生後56日齢以降となります。
2022年6月から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について「マイクロチップ」の装着が義務化されました。子猫を購入した場合は、飼い主情報を変更しましょう。譲渡や保護で子猫を飼い始める場合は、動物病院でマイクロチップを装着しましょう。
子猫は生後数週間、母親から初乳を介し子猫に取り込まれる移行抗体により守られていますが、一般的に8〜12週齢までには免疫応答が可能なレベルまで減弱するとされていますが、移行抗体が低い子猫はそれよりも早い時期に無防備になる可能性があります。
これをふまえ、世界小動物獣医師会(WASAVA)では6〜8週齢に初回の「混合ワクチン」を接種し、その後2〜4週間隔で16週齢まで追加接種を行っていくことを推奨しています。最終接種が終わるまで、他の動物との接触は避けましょう。
ワクチンについて詳しくは「予防について」をご覧ください。
初回ワクチンから2〜4週間後に「混合ワクチンの2回目」を接種します。
2回目のワクチンから2〜4週間後に「混合ワクチンの3回目」を接種します。
感染症などの心配がなければ、先住猫など他の動物と接触を始めて良いでしょう。
もし、生後16週より前に3回目が終わった場合は、16週齢以降に「混合ワクチンの4回目」を接種します。
不妊はもちろん目的の一つですが、私たちが避妊・去勢手術をご提案する理由は「病気の予防」の側面からです。
詳しくは「避妊・去勢について」をご覧ください。
「混合ワクチン」は年に1回が推奨されています
「ノミ・マダニ予防」は1年を通して
「フィラリア予防」は4月から12月まで
健康診断もオススメです。詳しくは「予防について」をご覧ください。
子猫のゴハン
フェリーチェペットクリニックにはペットフードアドバイザーがいます。お気軽にご相談ください。
生後4週間までは母犬の母乳だけで必要な栄養を満たすことができます。母犬と一緒に生活できない場合は、犬用のミルクを与えましょう。
生後1ヶ月になったら、ミルク以外の離乳食やドッグフードを始めます。
ドライフードを水やお湯でふやかして、柔らかくしてから与えます。少しずつ固さを調節して、2ヶ月ごろまでにドライフードが食べられるようになるとよいでしょう。
生後6ヶ月を過ぎると、成長に必要なエネルギーが少なくなるため食事の量が減りますが、心配はありません。
生後10ヶ月〜12ヶ月ごろに成猫の体重に達します。成猫用フードに切り替えてください。
必要なエネルギーの計算の仕方は以下のブログをご覧ください。