子犬に多い上部気道感染症
おうちに迎え入れたばかりの子犬でよく見られる病気の一つとして、ケンネルコフと呼ばれる上部気道感染症があります。
別名、犬伝染性気管気管支炎と呼ばれ、罹患率が高い一方で、死亡率は低い傾向です。
1つの病原体が原因となる病気ではなく、様々な細菌やウイルスが複合して感染、発症することが多いようです。
咳を中心とした呼吸器徴候に加えて、食欲不振・嘔吐・下痢などを伴うこともあります。
吐物による誤嚥性肺炎に発展してしまい、重症化することもあります。
1歳未満の子犬の1.9%が罹患
ペット保険会社の2013年の報告では、1歳齢未満の子犬の1.9%がケンネルコフに罹患して動物病院を受診した一方で、1歳齢以上の犬の受診は0.05%以下でした。
このように、ケンネルコフは1歳齢未満の子犬に多い病気です。
ケンネルコフは、多頭飼育環境であるペットショップやブリーダーでよく発生するとされています。
おうちに迎え入れたばかりで、環境の変化によるストレスが加わった子犬が発症する場合が多いようです。
診断と治療
レントゲン検査では、下部気道である肺野に異常が見られないことも多いですが、肺炎を併発していないかレントゲン検査を行ったり、聴診にて異常音が聴取されないかを確認します。
ケンネルコフの主要な病原体はBordetella bronchiseptica、犬パラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルス1型・2型、犬ヘルペスウイルスですが、マイコプラズマ、犬ジステンパーウイルス、犬レオウイルスが同時に分離されることもあります。
また、複数の病原体による混合感染も多いようです。
病原体は、鼻腔・咽頭・口腔から採取したぬぐい液を外注検査で特定します。
ケンネルコフの多くは自然治癒すると考えられていますが、重症化する可能性もあり、抗菌薬、気管支拡張薬、鎮咳薬の投与やネブライザー療法(吸入)を行います。
細菌やウイルスの同定には時間を要するため、疑心症例に対しては同定前に治療を開始することがほとんどです。
ネブライザー療法は一度の治療では改善しないことも多く、また、長期間の治療が必要になることもあります。