猫のフィラリア
犬糸状虫症(フィラリア症)は、本来イヌ科動物によく起こる疾患であり、猫では感染に対して抵抗力があります。
しかし、猫での有病率は、犬における寄生率の5〜20%であると書物などに記載がありますが、これは成虫の寄生率であり、実際には61〜90%の猫が暴露されているということがわかっています。
決して少ないわけではありません。
猫の場合は呼吸器疾患
犬のフィラリア症は心臓疾患ですが、猫の場合は呼吸器疾患であり、3つの病態に分けられます。
未成熟虫が肺動脈に移行する時にそのほとんど死滅しますが、これによって炎症反応が生じ、犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)という猫特有の反応が起こります。
発咳、呼吸困難、嘔吐の症状が現れますが、3割程度の猫は無徴候であるとも言われています。
成虫まで生存した犬糸状虫が死滅したことで始まり、死滅した虫体が変性し肺の炎症性変化と血栓塞栓症を発症させます。
この際に10〜20%の猫で突然死が起こります。
第1・2病期を乗り切った猫の肺は不可逆的変化(元には戻らない)を生じています。
心臓の異常はあまり認められませんが、肺の過膨張などの慢性の肺障害を生じ、有効な治療法がない状態となってしまいます。
診断と治療
猫のフィラリア症は大部分で無徴候か一過性の徴候であるため、異変に気付けないことが多く、診断はとても難しいと言われています。
間欠的な発咳、呼吸困難、頻呼吸、嘔吐が認められる場合は、フィラリア症も鑑別疾患として考慮すべきと考えます。
レントゲン検査、心臓超音波検査(成虫が寄生していれば発見しやすい)、抗体検査(外注検査、偽陰性の可能性あり)、抗原検査(成熟雌虫の抗原を検出する犬用のキット。偽陰性の可能性あり)を、疑わしい限り繰り返し実施することが重要と言われています。
猫におけるフィラリア症の治療は、虫体の駆虫ではなく臨床症状を緩和させること(ステロイド剤の投与など)になります。
成虫駆除を行うと、死滅虫体により肺血栓塞栓症が生じてしまうリスクがあるためです。
成虫が寄生していた場合、臨床徴候がなければ虫体が自然に死滅していくのを待つことになります。
予防の必要性
完全な治療法がないこと、61〜90%の猫が暴露されていると言われていること、潜在的に犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)を発症する危険性を持つ猫が意外と多く存在していることから、猫も積極的にフィラリア予防を検討すべきと考えています。
ノミ・ダニ予防と同時にフィラリア予防もできるスポット剤も数種類ありますので、フェリーチェペットクリニックのスタッフまで、お気軽にご相談ください。