猫の病気

猫白血病ウイルスについて

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猫白血病ウイルス (Feline Leukemia Virus:FeLV)は、持続感染することでさまざまな致死的な疾患を引き起こします。
環境中ではすぐに死滅し、通常の消毒剤(エタノールや洗剤など)が有効ですが、感染性のウイルスは、唾液・鼻汁・尿・糞便・乳汁に排泄され、グルーミング・咬傷・食器の共有などによって経口または経鼻で感染します。

持続感染

粘膜細胞から局所のリンパ組織へ、次いで骨髄や他のリンパ組織へと広がります。
局所リンパ節などで増殖したウイルスは、血流中に一時的に出現するため、感染を受けた猫のうち70〜90%は、感染後4週間程度で一度はウイルス血症となり、急性期の症状として、発熱、元気・食欲消失、リンパ節腫脹、免疫介在性血球減少症(貧血、好中球減少症、血小板減少症)が見られ、死亡することもあります。

生まれたばかりの子猫では、約70〜100%がそのまま持続感染となり治りません。
8〜12週齢の子猫では30〜50%が持続感染となり、残りは治ります。
成猫では持続感染になるものは10〜30%で、ほとんどが治るとされています。

ウイルスの免疫学的排除ができずに骨髄感染が成立してしまうと持続感染となり、持続性ウイルス血症を呈し、ウイルスは他のリンパ節、口腔や鼻腔あるいは他の粘膜上皮へと広がり、唾液などの体液中にウイルスが出現して感染源となります。
持続感染期の病気は、表面的な健康状態がしばらく続いた後2〜3年で見られ、持続感染猫の致命率は年間50%、2年で63%、3年半で83%と言われています。

関連疾患

レトロウイルスの特徴として遺伝情報をDNAに変換して宿主DNAに組み込むため、どの細胞にFeLVが入るか、どの遺伝子の横にFeLVが入るかにより細胞の増殖を抑制するのか、異常増殖(腫瘍化)するのかが変わり、またFeLVのサブタイプによる病原性の違い、感染する細胞の種類が多いことなどから、その病態は多様です。

猫白血病ウイルス(FeLV)関連疾患として、以下の病態があります。

  • 骨髄疾患:急性骨髄性白血病(赤血病、赤白血病、骨髄異形成症候群含む)
  • その他腫瘍性疾患:リンパ腫、線維肉腫、骨軟骨腫瘍症
  • 貧血
  • 汎白血球減少症様症候群
  • メス猫の繁殖障害
  • 神経ならびに運動器疾患
  • 二次感染症あるいは日和見感染症
    皮膚糸状菌、ウイルス性疾患(FIPやFRVなど)、真菌、原虫、 Micoplasma、細菌性疾患(口腔内疾患、呼吸器感染症、腸炎、皮膚疾患、敗血症)
  • 免疫介在性血球減少症
  • 糸球体腎炎

診断と治療

猫白血病ウイルス感染の診断は、通常、簡易検査としてELISAの院内検査用キットによるFeLV抗原検出を行います。
いずれの年齢においても検査は可能ですが、最終判定は感染の可能性があった最後の日(=お家に迎え入れた日)から28日経ってから行います。
ELISA陽性と判定されてしまったら、1ヶ月後に再検査を行い、陰転したらさらに1ヶ月後にも検査をします。
2回連続で陰性ならば感染は終結したと考えます。
一方、最初の陽性から4ヶ月後も陽性ならば、持続感染と考えます。
その他の検出方法として 免疫蛍光染色(IFA)によるFeLV抗原検出(骨髄持続感染の有無)、PCRでプロウイルスのDNAを検出することもあります。
猫白血病ウイルスに対する特異的治療はありませんが、インターフェロン-ωによる治療を検討することもあります。

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